人手不足が続く歯科業界では、給与を上げると採用しやすくなる一方で、人件費率が上がりすぎると経営を圧迫するという難しいジレンマがあります。このバランスをどう取るかこそが、院長の手腕の見せ所です。
2025 年 6 月時点で歯科衛生士(DH)の有効求人倍率は 21 倍、求人人数は 14.8 万件 と過去最高水準に達しました。
本ガイドでは「人件費率」を軸に、地域別給与相場・モデル給与テーブル・逆算シミュレーションを提示し、適正な給与水準を維持しながら採用と定着を実現する方法を解説します。
歯科医院の人件費率とは?適正値を押さえる
個人開業と医療法人で異なる目安(15〜25%)
歯科医院の人件費率は 売上高に対して 15〜25% が適正レンジとされます。
- 個人開業:15〜20%
- 多院展開する医療法人:20〜25%
いずれも規模が大きくなるほど、人件費率は上がる傾向があります。
人件費率が高止まりすると利益はどれだけ減るか
売上 8,000 万円の医院で人件費率が 20%(1,600 万円)から 25%(2,000 万円)に上昇すると、年間 400 万円の利益が圧縮されます。家賃や材料費が変わらない場合、その差額を自費診療やリコール増で埋めなければなりません。
詳しくはこちらの記事もご覧ください
歯科医院の賃上げで経営が苦しい?人件費率の目安と原資の作り方【2025年版】
人件費率の計算方法とチェックシート
| ステップ | 内容 | 参照データ |
|---|---|---|
| ① | 年間人件費総額を集計(給与・賞与・社保・福利厚生) | 会計ソフト |
| ② | 年間総収入(売上高)を確認 | レセプト・会計 |
| ③ | 人件費率 = 人件費 ÷ 売上 × 100 | 上記の数値 |
月次では賞与や社保納付月の影響でブレが大きくなるため、四半期平均で管理すると誤差を抑えられます。
2025年6月版|地域別求人件数と平均給与データ
歯科衛生士(DH)の都道府県別平均給与
全国平均は 年収 404 万円/月給 26 万円。関東・東海は 430 万円前後、東北は 370 万円台と、地域間で約 60 万円の差があります。
| 地域 | 平均月給 | 年収換算 |
|---|---|---|
| 東京 | 29.8 万円 | 437 万円 |
| 愛知 | 28.7 万円 | 421 万円 |
| 大阪 | 28.1 万円 | 413 万円 |
| 福岡 | 26.5 万円 | 389 万円 |
| 北海道 | 25.3 万円 | 372 万円 |
歯科助手(DA)の求人件数ヒートマップ
銀座駅周辺の DA 求人数は 36 件(2025 年 6 月時点)と都市部は供給過多。
地方都市では 5〜10 件しかないエリアもあり、提示給与で差を付けやすい状況です。全国平均年収は 322.9 万円 と報告されています。
DA・DHの職種別・経験別モデル給与テーブル
| 経験年数 | DH(月給) | DA(月給) | DH 昇給幅 |
|---|---|---|---|
| 新卒 | 24 万円 | 20 万円 | — |
| 3 年目 | 27 万円 | 22 万円 | +3 万円 |
| 5 年目 | 30 万円 | 24 万円 | +3 万円 |
| 10 年目 | 35 万円 | 26 万円 | +5 万円 |
資格手当(インプラント・矯正)+1〜2 万円、リーダー手当+1 万円を上乗せする設計例。
※給与テーブルは地域により想定が異なります。
私たちが提供する採用代行サービスの、無料相談をご利用いただいたクリニック様には、貴クリニック周辺地域の 「 DA・DHの地域別求人件数と平均給与データ」をプレゼントいたします。
人件費率から逆算する給与シミュレーション
売上 6,000 万円・人件費率 20%の場合の上限給与
- 人件費枠:6,000 万円 × 20% = 1,200 万円
- 月給枠(DH 2 名・DA 1 名):1,200 万円 ÷ 12 ÷ 3 = 33 万円
賞与・社保を考慮すると、DH 28 万円/DA 20 万円程度が目安になります。
自費率アップ時の再試算テンプレート
自費売上を 10% → 25%に引き上げ、年間売上が 6,000 → 7,200 万円に伸びれば、人件費率を 22%に上げても人件費枠は 1,584 万円。
この条件なら DH 基本給を+2 万円する余地が生まれます。
地域相場と求人難易度を踏まえた採用戦略
首都圏 vs 地方都市で必要な提示額の違い
有効求人倍率 20.7 倍の首都圏では、平均+1〜2 万円の上乗せがないと応募が集まりにくい。
地方都市では 住宅手当や 週休 3 日制 が差別化ポイントになります。
有効求人倍率と応募単価の相関グラフ
倍率が 5 上がると応募単価が平均 8,000 円上がる、という採用データがあります。
給与だけに頼らない総報酬パッケージ
| 施策 | 期待効果 | コスト感 |
|---|---|---|
| 研修費 年間 5 万円/人 | 離職率 −12pt | 年 15 万円 |
| 予防サブスク歩合 5% | 自費売上 +15% | 売上連動 |
| 自院ホワイトニング無料 | 求人応募 +25% | 月 3 千円/人 |
福利厚生や教育投資を組み合わせると、同じ人件費率でもスタッフ満足度を高められると報告されています。
給与改定サイクルとスタッフ評価制度
- 半期ごとの KPI 評価(リコール率・自費成約率)
- 年 1 回の給与改定で昇給幅を明確化
- 360 度フィードバックで受付・DH・Dr が相互評価し、納得度を向上
ケーススタディ|人件費率を守りつつ満足度を高めた 3 院
賃金テーブル公開で離職をゼロにした A 院
役職・手当・昇給条件を全面公開し、離職率 0% を 2 年継続。
予防サブスク導入で平均給与を 3 万円増やした B 院
定額メンテ(月額 3,000 円 × 800 人)を確保し、人件費率 22% 内で DH 給与+3 万円 を実現。
人件費率 18%をキープし教育費を捻出した C 院
キャンセル率を削減して売上を増やし、教育費を年間+20 万円投入。スタッフ満足度は 4.6 → 4.9 に向上。
まとめ|適切な給与水準を保つためのチェックリスト
- 年次・月次で人件費率を算出し 15〜25% 内か
- 地域平均と求人倍率を確認し、提示額が相場に合っているか
- モデル給与テーブルと昇給条件を文書化したか
- 自費アップやサブスク導入で給与枠を拡大する計画があるか
- 教育・福利厚生を含む総報酬で比較し、定着率を高めているか
- 四半期ごとに人件費率と離職率をレビューし、改善しているか
数字で管理すれば、「高いか安いか」ではなく「医院も成長し、スタッフも満足する給与」を実現できます。






