歯科医院の経費を最適化する完全ガイド──勘定科目から節税・DXまで数字で掌握

歯科医院の平均医業利益率は 15〜20 % 程度と言われます。しかし、勘定科目を正確に仕訳し、税制特例と DX を組み合わせれば、経費比率を年▲10〜15 ポイント削減し、利益率30 %超を実現することも十分可能です
人件費率・材料費率などのベンチマークを把握し、節税策や補助金で設備投資コストを抑えつつ、クラウドレセコンや RPA による業務自動化でランニングコストを圧縮――本ガイドでは、その具体的ノウハウを体系的に解説します。


歯科医院で計上できる経費とは?

法人 / 個人で異なる取扱いと注意点

医療法人は役員報酬や退職金を損金算入できますが、個人開業医は青色専従者給与に上限がある点に留意しましょう。

経費にできない “NG 支出” の代表例

高額な日当や家族旅行を研修費として計上すると、国税庁の否認事例に該当し追徴課税のリスクがあります​。


主な経費科目と仕訳の実務

人件費・賞与・退職金の勘定科目

労働分配率の平均は 34.5 %、人件費率の指標は 28 %​。退職金は「退職給与引当金」または「役員退職慰労金」として長期負債に計上します。

材料費・技工費・消耗品費の按分ルール

原価率は 15 %以下 が理想。薬品・金属・医療消耗品は用途別に区分し、在庫棚卸で精緻に計上しましょう​。

設備投資と減価償却のポイント

歯科ユニットの耐用年数は 7 年。たとえば 300 万円なら、毎年約 43 万円 を減価償却費として計上します。定率法・定額法の選択でキャッシュフローが変わるため要検討です。


節税に効く経費活用&税制特例

概算経費特例と簡易課税の判断基準

社会保険診療報酬が 5,000 万円未満なら、租税特別措置法 26 条の概算経費率を選択可能。ただし自費売上が多い医院には不利な場合があります​。

小規模企業共済・経営セーフティ共済の活用

掛金 月7 万円(年84 万円)を全額所得控除でき、損金算入により実効税率を圧縮できます​。


医療費控除・福利厚生費との線引き

従業員健康診断は経費、院長個人は NG

スタッフの法定健診は福利厚生費ですが、院長の人間ドック費用は医療費控除の対象外で経費算入も不可と国税庁が示しています​。

自費治療費の医療費控除との併用注意点

自費矯正や審美治療費は医療費控除の対象ですが、医院側での経費計上とは独立管理が必要です​。


経費比率ベンチマークと KPI 設定

人件費率 45 %・材料費率 10 %が目安

業界平均では人件費+材料費で医業収入の 40〜45 % が標準。それを超えると利益率が急低下する傾向があります​。

固定費 / 変動費モニタリングダッシュボード

月次推移を可視化し、人件費・家賃・リース料など固定費の増加を早期検知する医院は、赤字月発生率を 50 % 低減しました​。


DX で経費を 50 % 削減するツール導入

クラウドレセコン・RPA で作業時間を短縮

RPA でレセプトチェックと請求業務を自動化すると、月 30 時間 の事務工数が削減され、人件費換算で年間 100 万円 節約できた事例があります​。

ペーパーレス&電子請求で保管コスト削減

IT 導入補助金を使えば、レセコン・電子カルテ導入費の 1/2(上限350 万円) が補助対象となり、ROI を2 年以内 に短縮できます​。


補助金・助成金で設備投資負担を軽減

IT 導入補助金・ものづくり補助金の申請フロー

gBizID取得 → 事業計画入力 → 交付決定 → 実績報告の4ステップ。交付までは 約4〜6 か月​。

県・市の医療機器導入支援制度チェック

自治体によってはレントゲン更新費の 1/3 補助や利子補給制度があり、事前相談で採択率が 20 % 向上した例があります​。


ケーススタディ:経費最適化で利益率を 15 pt 改善

ビフォーアフター PL と施策内訳

BeforeAfter
売上8,000 万円8,000 万円
利益率16 %31 %(+15 pt)
人件費率45 % → 38 %RPA導入+シフト最適化
材料費率12 % → 9 %共同購入・在庫管理
その他コスト各種補助金活用レセコン・電子レセ自動化

失敗しないプロジェクト進行ステップ

  1. 現状経費の棚卸
  2. KPI 設定
  3. 補助金申請
  4. DX 導入
  5. 効果測定
  6. 社員教育

半年ごとに PDCA を回して再投資を判断しましょう。


まとめ|経費最適化チェックリスト

  • 人件費率 < 45 % ・材料費率 < 10 % を維持しているか​
  • 概算経費特例・簡易課税の適否を毎年シミュレーションしたか​
  • 小規模・経営セーフティ共済で所得控除を最大化したか​
  • DX(クラウドレセコン・RPA)で事務工数を ▲30 h/月 削減したか​
  • IT 導入補助金・自治体支援で設備投資の 50 %以上 を補助金で賄ったか​
  • ダッシュボードで固定費 / 変動費を月次モニタし、赤字兆候を即発見できる体制か

このチェックリストと各種ツール・税制を組み合わせれば、経費を数字で掌握し、利益率を継続的に向上 させることができます。今日から経費最適化の PDCA を回し、強固な収益体質を築いていきましょう。