
歯科医院の平均医業利益率は 12〜18% と報告されますが、自費比率を軸に収益構造とコスト構造を最適化した医院は 40% 超の利益率を実現しています。本稿では「第 23 回医療経済実態調査」など公的統計を基に、売上・コスト・投資・DX・人材の各要素を KPI で可視化し、利益 40% に到達するロードマップを示します。
歯科医院の収益構造を押さえる
保険診療と自費診療の売上比率
個人歯科の平均構成は 保険 82.2%/自費 17.6% で推移。利益率 40% 医院では 自費 30〜45% が共通値です。
訪問・物販・技工内製など追加収入
- 訪問歯科:レセ 50 枚 → 売上 200 万円・利益率 30% 超
- 物販:原価+30% の価格設定で粗利 約 30% を確保
利益率を左右する 5 大コスト
1. 材料・技工費
売上の 10〜12% が目安。ブロック一括購入や銀パラ共同購入で −5〜7% 削減可能。
2. 人件費とチェア稼働率
理想は 人件費率 30% 以下。チェア稼働率が 65% 未満 だと人件費率 40% 超 へ跳ね上がる相関。
3. 設備投資と減価償却
CAD/CAM 導入で自費率を 45% へ引き上げた医院は ROI 回収 18 か月。5年直線償却で月額コストを平準化できます。
4. 広告販促費
CPA と LTV を対比し ROI>1.5 を維持。詳細は後述。
5. 水光熱・家賃
固定費率を 15% 以内に抑えると損益分岐点が下がります。
自費診療を伸ばすメニュー戦略
インプラント・矯正・セラミックの価格設計
インプラント 1 歯あたり粗利 約 30 万円。地域中央値+10% で設定し、診断料・サージカルガイド料を別建てに。
予防メンテ “サブスク” で LTV を底上げ
定額モデル「スウェデンタルケア」:年間 36,000 円 × 継続率 85% → LTV 増。
新患獲得とリコール率向上
施策 | 指標 | 実績例 |
---|---|---|
MEO | CPA ¥1,900 | 新患 **+32%** |
LINE リマインダー | リコール率 | 80% 達成、キャンセル **−60%** |
投資配分の目安:MEO 20%/リスティング 50%/SNS 30%。
キャッシュフローと資金調達
借入シミュレーション
モリタのツールで返済比率 25% 以下 が安全域。
医療法人化・節税
役員報酬分散+ MS 法人活用で実効税率 30 → 22% に圧縮。
DX で生産性を劇的に向上
ツール | 成果 |
---|---|
口腔内スキャナ | 印象採得 −7 分、再印象 **−58%** |
CAD/CAM | 保険前歯冠:技工差 ¥1,900 以内で黒字分岐 |
クラウドレセコン | キャンセル率 12 → 5%、月商 +45 万円(回収 7.2 か月) |
KPI で見る「儲かる医院」の数字
- チェア稼働率:75%
- 自費比率:40%
- 患者 LTV:35 万円
- 医業利益率:40% 超
損益分岐点=固定費 ÷ (1 − 変動費率)。週次ダッシュボードで赤字月ゼロを実現。
スタッフマネジメントと報酬設計
- グレード制+自費歩合 5% → 自費 +12 pt・離職 **−50%**
- 動画 e-learning × OJT → 教育期間 3 → 1 か月、コスト **−40%**
多角化で収益基盤を強化
分野 | 指標 | 実績 |
---|---|---|
訪問歯科 | 利益率 2 倍 | ストック型収入 |
物販 | 粗利 ¥1.2 百万/年 | 原価+30% 設定 |
まとめ|利益 40% 達成チェックリスト
- 自費 30%+訪問+物販 の三本柱を構築
- 材料・技工費を 売上 10% 台前半 に最適化
- チェア稼働 75%/リコール 80% をダッシュボード管理
- CAD/CAM・クラウドレセコンの ROI ≤18 か月 を確認
- 返済比率 ≤25%、医療法人化で実効税率 **22%**
- グレード制+歩合給で 自費+12 pt、離職 −50% を実装
売上の質向上 × コスト最適化 × スタッフ活性 を数値で回せば、医業利益率 40% の高収益モデルは十分実現可能です。